龍円愛梨(東京都議会議員)
スペシャルニーズ(障がい等)がある人もない人も、子どもから大人までのべ250人以上が制作に参加した「渋谷みんながつながるインクルーシブアート」では、私の想いと夢をたくさんの方と共有して、一緒にカタチにしていただきました。一生涯忘れない、幸せで貴重な経験となりました。
このアートが誕生したのは2022年11月です。多様な関係者に参画いただきながら、1年以上かけて調整を進めたプロジェクトです。その過程は、「インクルーシブへの挑戦」とも言える活動だったと思います。立場の違う方たちが「同じビジョン」を共有し、最後はみんな笑顔でプロジェクトを終えられ、本当に喜びで胸がいっぱいで、心から感動しています。
舞台は、渋谷都営バス営業所の壁で、東京都交通局が所有しているものです。一方で、アート支援は東京都生活文化局が担当です。「縦割り行政」などと揶揄されることもある東京都行政ですが、交通局と生活文化局の担当者様は、しっかりと横連携をしてくださいました。過程においては、東京都との渋谷区とが話し合う場面もありました。さらに。プロジェクトの実施主体は、渋谷区障害者団体連合会(渋障連)と一般社団法人CLEAN&ARTという異色の2団体がコラボレーションでした。これまで協働したことがないような複数の行政と民間の関係者が、同じ目標のために動くには、相互理解、歩み寄り、調整が必要でありましたが、ありがたいことにすべての関係者が忍耐強く柔軟に協力してくださいました。このプロジェクトが成功した背景にはそういった数多くの皆様のご努力と協力があってのことです。
その上で、このように素晴らしい作品が誕生したのは、壁画アーティストでCLEAN&ART代表の傍嶋賢さんによる、天才的なアートディレクションがあったからに他ありません。「誰もが参加できるアート制作活動」であり「個々が個性的で自由な表現」をしながらも、100m以上ある壁画の全体に統一感があり、なおかつ誰が見ても気持ちがいいと想える高いデザイン性とアート性を担保するというのは、至難の業です。制作風景を見ると、あまりにバリアフリーで誰でも参加できるので、拍子抜けするほど簡単そうに見えちゃうのですが、それを生み出すのは簡単なことではありませんでした。傍嶋さんに伺うと、2年も構想にかけてきたそうです。このインクルーシブアートの手法は、ひとつの発明なのではないかと考えます。CLEAN&ARTは、同じ理念で結ばれて一致団結しているチームワークも大変素晴らしいものでした。
このプロジェクトで、私がもっともこだわったのは、「インクルーシブ」でした。多様な参加者が、アートを通じて繋がり、仲良くなり、喜びを共有し、コミュニティづくりにも資するものになって欲しいと考えています。おかげさまで本当にいろんな人が参加してくださいました!スペシャルニーズのある人もない人も、2-3歳の小さい子からシニアまで様々な年代の方が参加してくれました。原画づくりは、渋障連の全面協力のもと通所施設等でWS(ワークショップ)を開催したほか、恵比寿の児童館「景丘の家」では親子向けのWSも開催しました。渋谷区初台の医療的ケア児のための保育園「ヘレン」や、「みんなの未来をつくる保育園」の皆さんは、先生たちのご協力のもとで参加いただきました。壁画は、作品が何年も街に残っていきます。同じように、制作活動を通して生まれた絆も、継続的に続いていくようなものになったら素敵だなぁと思っています。このプロジェクトを通じて生まれたインクルーシブの芽を育てていけるように、今後もインクルーシブアートの活動を続けるとともに、壁画前では定期的に「道遊び」などのイベント開催を続けていきたいと考えています。
2022年12月に開催したインクルーシブアートシンポジウムでは、渋障連の本田道子会長から「このプロジェクトによって、障害のある人たちの姿が公共の場において”見える化”された。社会に知られることによって、参加した障害者にとっては第二の誕生日を迎えたような気持ち」と話していただきました。私自身、ダウン症のある子ども(ニコ)を育てている親であり、この言葉に胸が熱くなりました。なぜならニコが「まるで存在していない」かのように扱われ、悔しく悲しく感じる経験を、これまで私自身もたくさんしてきたからです。私たちはここに存在している、そしてその存在はこの壁画のようにカラフルで優しく美しいものなのだって、この渋谷の街で狼煙を上げることができたような気持ちです。
誰もが自分らしく輝きながら参加しているという実感が持てるインクルーシブな社会の実現に向かって、大きな一歩を、たくさんの応援をいただきながら、仲間と一緒に踏み出せたことに心から感謝しております。関係してくださった皆様に、心から御礼を申し上げます。
ありがとうございます!!
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